「運動会・発表会を行わない」ことについて

■運動会・発表会については、次の3つの観点から当園では行わないことといたしました。

1 安全な保育
2 適切な保育
3 保育士の働き方改革

■運動会や発表会を行わなくても、普段の保育の中で、運動や音楽活動などをしっかり行っていきます。また、園児のための行事についても、毎月園内で会議を開き検討をしております。新しい行事が増え、子どもたちはとても楽しんで過ごしてくれています。これからも、子どもたちの最善の利益のために保育の内容の改善を進めてまいります。

■以下、項目ごとに説明をして参ります。

安全な保育

■自然災害や事故などの危険に備えることは、保育の最優先の課題です。園児はまだ自分で自分の身を守ることができない年齢です。そのため、園では1日最大11時間30分の保育を安全・適切に行っていくことに力を注いでいます。運動会や発表会は、保育時間中に準備や練習をすることが難しく、また園外で行う場合はさらにリスクが高まります。そのような状況では、園児の安全を確保することが困難です。

■また、令和5年4月より園独自の安全計画を策定することが法律上も求められることになりました。その計画に基づき、職員は定期的に会議を設け、また、訓練や研修を受けています。運動会や発表会を行うことは、そのような計画や訓練と整合性が取れない場合があります。安全な保育を行うことは当然のことですが、そのことに対する社会的要請が非常に強くなってきていることは、報道等でご存じのとおりです。

適切な保育

■就学前児童は、自分の視点以外の視点から物事を把握することについては発達途上の時期です。例えば、全員で整列し、合図があるまで待機し、合図に基づいて一斉に同じ行動をとり、合図で行動を終了するといった行動は、この時期の子どもにとって、非常に難しいのです。

■ですので、実際には、子どもたちは、全体の状況を把握して自主的に自分の行動を修正していくというよりは、担任の言葉や表情などの反応を頼りに、ある意味では手探りで行動を修正して練習を進めていくことになります。そのような経験を繰り返すことは、子どもたちが本来持っている個性や自主性を抑え込むことにもなりかねません。このことから、運動会、発表会については練習を含め、この時期のお子さんにとってはやはり適切ではないという可能性があります。

■上記のような観点から、園内のその他の行事の内容についても園児にとって適切なものになるよう、常に見直しを行っております。虐待や不適切な保育を行うことはもっての他でありますが、適切な保育を行うことについて、社会的な要請が非常に強くなっております。

保育士の働き方改革

■園では1日最大11時間30分の保育を行っています。その間、職員は交替で勤務していますが、ほとんどの時間は保育にあてられています。そもそも労基法上の労働時間は一日最長で8時間です。交替勤務だけですと朝や夕方の職員数が手薄になりますので、職員の超過勤務により保育時間を対応せざるを得ないのが現状です。運動会や発表会の準備など保育以外の仕事をする時間を勤務時間中に確保することは非常に難しいと感じています。

■桜川市だけではなく、日本全国で少子化が進んでいます。令和4年度より桜川市は全域が過疎地となっております。出生数の加速度的な減少とともに、園児数も減少してきています。この傾向は更に続き、園児数が回復することはおそらくもうありません。より家庭的な雰囲気の保育へと移行していくことが考えられます。

■園児数減少に伴い、配置できる職員数も減少しています。また、少子化の影響により、将来的に園に就職する保育士が減少することが考えられます。県内でも地域によっては深刻な問題となっています。

■産前産後休暇等でお休みの職員や退職する職員もおります。今後とも職員の確保につとめて参りますが、限られた職員数で、保育の質を向上させていくことが更に求められているというのが現状です。

■令和元年度より労基法が改正となりました。年次有給休暇の強制取得(時季指定義務)については、非常勤職員を含む職員全てが対象となっております。これは年間法律で定められた日数の年次有給休暇を取得することが義務付けられ、取得ができないと労基法違反となるのが現状です。したがって、園でも調整をし、手分けをして休みをいただいております。このことは全企業の全労働者が対象ですので、皆さまご存知の通りです。

■自宅への仕事の持ち帰りも当然労働法上の規制を受けますし、また、そもそも個人情報保護の観点から仕事を自宅へ持ち帰ることもできません。所定の勤務時間内に職場で全ての仕事を完結することが社会的な要請となっております。

保育所保育指針

■保育所保育指針には、運動会や発表会については、特に定められておりません。幼稚園教育要領や幼保連携型認定こども園教育・保育要領についても同様です。(解説書には運動会や発表会に触れられている部分はあります。)

■保育所保育指針では、保育の目的として「子どもの健やかな成長と発達を促し、社会性を養うとともに、家庭生活を支援すること」を掲げています。また、保育の内容として「子どもの興味・関心や個性に応じた自由な遊びや活動を中心とし、子どもの自主性や創造性を伸ばすこと」を求めています。

■運動会や発表会は、その目的や内容と必ずしも一致しない場合があります。むしろ、子どもたちの自由な遊びや活動を制限することになる可能性があります。そのような場合は、保育所保育指針に沿った保育とは言えないこととなります。

■当園では、保育所保育指針を基本として、子どもたちの健やかな成長と発達を促し、社会性を養うとともに、家庭生活を支援することを目指しています。そのためには、運動会や発表会よりも、普段の保育の中で行う運動や音楽活動などがより効果的であると考えています。

職員の研修・訓練

■保育を取り巻く社会情勢は近年非常に変化のスピードが加速しております。最新の情報を取り入れるために、職員の研修の必要性はますます高まるばかりです。園の職員は園の研修計画に基づく研修を体系的に受講して、専門性の向上に努めています。

■また、今年4月からの法改正により保育の安全に関する訓練が義務付けられることになりました。職員は定期的に訓練や研修を受けています。研修の時間を確保することは非常に重要です。

保育の専門性

■以前は運動会や発表会を通じて園の保育についてご理解を広めていくという意味合いもありました。保護者の方にとって分かりやすさというメリットは大きいものがあったと思います。しかし、現在の保育の専門性というのは運動会や発表会を行うことではありません。あくまでも保育の専門性というのは、園内において保育士が園児たちとともに日々の保育を通じて養護と教育の両側面からの実践として積み上げられてくるものです。保護者の方の中には分かりにくいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、保育は単なる育児の代替や派手な行事を行うことではないということです。

保護者の皆さまの負担軽減

■園の行事の準備等に協力したいと思っていただける方もたくさんいらっしゃるとは思いますが、協力したいと思っていてもお仕事等の都合で協力できない方や、そもそも園の行事の準備は園でやれば良いと考えている方も同じかそれ以上にいらっしゃるように思います。また、週末は気の合う仲間と楽しみたい、大切なご家族とゆっくり過ごしたい、という方も多いようです。ですので、行事の見直しに伴い、保護者の皆さまの負担の軽減も図られていることになります。

■上記のようなことから、楽しみにしていた方には大変申し訳ありませんが、当園では、運動会、発表会は行いません。しかし、それは子どもたちのために最善だと考えています。どうぞ、皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

■今後とも園児の最善の利益のために保育を進めていきたいと思っています。